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YCRMS測定員の日々の測定についての紹介です。
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オレピークサーチのしくみ
皆さんこんにちは!今日は、横浜市民測定所の分析スタッフ山下さんが開発した「オレピークサーチ」のしくみについてのご紹介です。
前にブログでご紹介した、「オレピークサーチ」は、AT1320Aで出力したスペクトルを分析し、セシウム等の放射性核種のピークを同定するプログラムのことです。

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1 核種崩壊とその同定

 γ線は原子核内部から出る光(電磁波)で、核種の崩壊に伴って、高くなったエネルギー状態が低くなる時に発生します。この時出る光の色は核種によって決まっていますので、出た光の色を調べれば核種がわかります。これが核種の同定原理です。簡単ですね。


2 γ線スペクトルと検出器

 光の色をエネルギーで分類したものをスペクトル(spectrum)と呼びます。太陽の光をプリズムで分光した時に現れる、虹色の帯もスペクトルの一種です(青側がエネルギーが高く、赤側が低い)。核種ごとに出るγ線も電磁波の一種ですからスペクトルで表す事ができます。しかし、太陽光と違ってγ線は物凄い高エネルギーの電磁波で、人間の目には見えません。見えませんから色はわかりません。そこで、γ線の色を識別するのに良く使われる道具がシンチレータや半導体検出器です。測定所のAT1320AはCsを添加したNaIを使ったシンチレータ方式で、Geに比べ、安くて取り扱いが簡単です。しかし、スペクトルの分光能力、すなわち分解能が悲しいかな貧弱です。安かろう悪かろう、ですね。


3 NaIシンチレータによる検出

 核種ごとのγ線エネルギー(光の色)は非常に揃っていて、輝線と呼ばれます。これは、鋭い針のようなスペクトルピーク[*1]を持っています。優れた分解能を持つGe半導体検出器を使うと、簡単に核種を見分けることができます。しかし、NaIシンチレータ検出器の分解能は、Ge半導体検出器のそれの約1/50しかありません。Ge半導体では分離可能な50種類の異なる色の光が、全部同じ色に見えてしまう情けなさです。例えば、有名なI-131のγ線は364.49KeVのエネルギーピークを持っていますが、ちょっと横の351.93KeVの所に天然放射性核種であるPb214のγ線ピークがあります。この程度のエネルギー差(色の違い)は、Ge半導体検出器なら見分けられますが、NaIシンチレータでは区別が出来ません。同じ現象が、Cs-134の604.72KeVとBi-214の609.32KeVでも起きます。あら、どうしましょう?


4 間違いが精度を向上させる?~統計的性質の利用

 NaIシンチレータの分解能が低いのは、γ線を受けたNaI蛍光体が、揃った色の鋭い光を出さないからです。「正確な」色も出すのですが、それに混じって「間違った」色も出しているわけです。さらに、蛍光体から出た光は極めてかすかなため、光電子増倍管というアンプで増幅しています。この過程でまた「間違い」が起こり、更に分解能を低下させます。
 この「間違い」の発生は、シンチレーション現象という物性に基づくもので、消すことは不可能です。「間違い」とは何かメチャクチャなイメージがあります。しかしこの「間違い」の発生頻度は、真の光の色からの離れ具合でだいたい決まっているのです。実はなかなか律儀なヤツだったんですね。
 真の光の色(エネルギー)からのズレの大きさと、数え間違いの光の「数」とに一定の関係があるわけですから、逆に、この一定の関係を前提にして、光の「数」の形状(=ズレ具合)から、真の光の色(エネルギー)を「推測」することが出来ます。


5 オレピークサーチの動作原理と近接したピークの分離

 放射能検出器のスペクトル図は、γ線の数を、エネルギー毎に仕分けて数えたものです。AT1320Aのシンチレータ検出器は、盛大に数え間違いを起こすため、おのおのの核種の出すγ線の周囲に、間違ってカウントされた光の数が散らばって観測されます。この間違いカウントは、γ線ピークから離れるに従って、だんだんその数が減少していくため、スペクトルの山が徐々に低くなっていきます。このため、でろーんと広がった、鈍いピークを示します。この形状が統計的な確率分布を表しています。AT1320Aでは、おおむねこれを正規分布とみなして[*2]構いません。オレピークサーチでは、スペクトル図に対し、あらかじめ決め打ちした放射性核種のエネルギーピークを中心とした正規分布曲線でフィッティングを行い、ピークの同定を行なっています。測定器は離散的にしかエネルギーを分解できませんが、正規分布は連続分布なので、測定器のエネルギー区分とは無関係にフィッティングをします。このため測定器の物理的分解能を超えて「推測」することが可能になります。これが近接したピーク分離の原理です。
 Cs-134とBi-214を例に解説しましょう。これらの核種もγ線ピークの周辺に数え間違いによるカウント数が積上げられていて、正規分布型の山ができているはずです。しかし、この二つの核種はピークが非常に接近していて(下左図)、分解能の劣るNaIシンチレータではまるで一つの山のように見えてしまいます。ところが二つの核種はそのピークがずれているため、足し上げた山の形状は、微妙に正規分布とは異なります(下右図)。正規分布を前提にして、このズレ具合を統計的に処理すると、Cs-134とBi-214、どちらがどの程度混ざっているかが推測できます。
▼図をクリックすると大きく表示されます 図
▼図をクリックすると大きく表示されます
数式

分析スタッフ山下



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『分析スタッフ』 | 08:20:20 | コメント(2)
長時間測定について分析スタッフの見解
測定所に持ち込まれる検体は、汚染度の高いものから低いものまで様々です。AT(測定所で使用している放射能測定器ATOMTEX)でどの程度の時間測定すれば良いか?ちょっと難しい課題について考えてみました。

放射能濃度は、一定時間内に検体から出てくるγ線の数を数えて求めます。しかし、放射性崩壊は確率的な現象なので、計測時間が短すぎると崩壊現象そのものが起きないかもしれません。何回か崩壊を観測できるように、ある程度計測時間を長く取る必要があります。このようにして求めた放射能濃度は、「平均的」な状態量です。つまり放射能濃度は、本質的に誤差から逃れることができません。

放射線を利用した放射能濃度の測定は、「体育館に集めた小学生児童、例えば1,000人中の、花粉症患者の割合を求める」作業に似ています。花粉症患者かどうかは、医者に診断してもらうのではなく、「くしゃみ」をした児童を花粉症と判断することにします(この「くしゃみ」がγ線、花粉症児童が放射性核種)。

体育館の外は交通量の多い主要道に面しています。これではうるさくて「くしゃみ」の音の聞き取りが困難で、計数ミスが多発しそうです。このミスを減らすためには、体育館の壁を防音・厚くして、外部の雑音をできるだけ小さくしないといけません(これが遮蔽強化に当たります)。

しかし実際には、防音による外部雑音の低減には限界があり、完全に消音することはできません。なので、消せない雑音の分で、「くしゃみ」として聞こえる数を見積もっておいて、実測後に差し引くことで対応します(これがoperational BG*の意味)。

このようにして「くしゃみ」の数をかぞえるわけですが、計測時間があまりにも短いとうまくいきません。例えば測定時間が1秒しかないと、1,000人もいるとはいえ、全く「くしゃみ」が出ない可能性もあります。花粉症患者はゼロなんでしょうか?このことから、数える時間については、長い方が精度が良くなることが直感的にわかると思います。

では、測定時間は長ければ長いほど良いのでしょうか?そう単純ではありません。測定時間を長くすると、別な問題が起きてきます。
なかでも大きな問題となるのは、「測定環境のゆらぎの影響」です。

体育館「くしゃみ」測定では、あらかじめ外部の雑音の影響を見積もって、後で差し引くという操作をしました。しかし外部の雑音は常に一定ではありません。夜中は静かでしょうが、日中は交通量が増えてうるさくなります。日によっては、道路工事が始まるかもしれません。「くしゃみ」の測定時間を長くし過ぎると、この外部騒音のゆらぎの影響をまともに受けてしまいます。

放射能測定では、この外部騒音がBG(Background=環境放射線)に当たります。大学などの研究室レベルでの実測では、このBG揺らぎに細心の注意を払います。測定中、環境放射線量を常時チェックし、それが増えても減っても測定は中止です。BGの揺らぎは測定の精度を低下させるからです。測定時間を長くすれば長くするほど、このBG揺らぎを受ける可能性が高くなります。

更に、ATはこの揺らぎの影響を強く受ける性質を持っています。ATはセシウムに特化した食品専用としての位置づけのためか、あらかじめ定めたエネルギー領域の計数を足すだけで、核種毎のピーク同定はしません。このため、ピークずれの影響を修正することができません。測定時間が長くなればなるほど、ピークズレの可能性が高まります。

また、ATでの放射能測定では、実測時のBGとoperational BGが等しい、という前提のもとで放射能濃度の計算が行われます。しかし、実際にはBGはかなり大きく揺らいでいます(日常のcps数値の振れを見ればお分かりでしょう)。ATはこの揺らぎを考慮することができません。operational BG取得時の環境放射線量と実測時のそれが違っていた場合、測定時間を長くすれば長くするほど、誤差が累積されてしまいます。こうして出された値は意味のない数字です。

繰り返しになりますが、放射性崩壊は確率的な現象です。測定精度を上げるためには、測定時間を長くしなければなりません。しかし、そのためには、いくつかの前提条件が必要です。それは、

①雑音が少ないこと
②測定時のBG揺らぎがないこと
③ピークズレが起きないこと
④operational BGと計測時のBGが同じであること

です。
ATの定量アルゴリズムでは、測定時間が長くなると誤差が減少していきます。これは、ポアソン分布とその誤差の関係という統計的性質に基づいています(※文末に理論式。興味のある方はどうぞ)。

しかし、これは測定時間以外の諸条件が完璧に満たされて初めて実現する性質であることを心に留めておくべきです。

精度の高い測定のために、現実的に最も効果的なのは①で、そのためには遮蔽強化が効きます。次に気をつけるべきなのは②です。例えば人間は、体の中に放射性カリウムを大量に持っていますから、測定器の周辺をウロウロすると、それだけでBGが揺らぎます。理想的には地下に厚い遮蔽板でおおった放射能暗室を作って、その中に測定器を置きたいところです(実際、リニアコライダー等ではこうしてる)。逆に、そうでない環境下では、単純に測定時間だけを伸ばしても、その時間に見合うだけの効果は得られないでしょう。

更に検体の状態にも気をつけなければなりません。ATOMTEXのうたうカタログ上の測定下限3Bq/Kgは、検体が水道水の場合です。水道水ですから、形状・密度・一様性全てが理想的な状態です。下限値3Bq/Kgはこの状態で実現されるものです。

測定所はATの出す数字を尊重する立場を取っています。しかし、それはATの出す数字を盲信することではありません。測定時間を伸ばせば、表記上の下限値は下がっていきますが、その信頼性のチェックは絶対に必要です。①~④の条件は十分に整っているのか?検体の状態は理想的か?カタログ上の検出下限値は重要な意味を持っています。測定の努力によって、カタログ上の検出下限値にできる限り近づけることが科学的に妥当な行為と言えるでしょう。

このように書いていくと、まるでATは測定に足る性能を持ってないように思うかもしれませんが、そうではありません。
放射能測定器には、その測定形式によって長所短所があります。ATは後述する「スクリーニング器」としては、かなり高性能です。

シンチレータ式(AT)は、高性能測定器の代表格であるGe半導体測定器に比較して、分解能は大きく劣りますが、感度やハンドリングは優れています。
その最大の長所は、比較的短時間で、手軽に測定を行うことができるという機動性です。
ATはスクリーニング器として位置づけされています。多様な食品を、短時間で手軽に測定し、検体を怪しいものとそうでないものに振り分けます(スクリーニング)。汚染度が非常に低く、怪しいものは、高い分解能を持つGeに回す、これがATの本来の使い方です。

測定所では以上のATの特徴を踏まえ、その特性を生かした測定を行っていきます。

分析スタッフ 山下



ポアソン分布の統計的性質から、検出に必要な時間を求めることができます。

検体の放射線量をa(cps)
BGの放射線量をb(cps)
とすると、検出に必要な測定時間tとの関係は、

(a+b)*t-b*t >=k*(2b+a)^0.5

となります。これをtについて解くと、

t=k^2*(1+2b/a)/a

です。ここでkは検出と不検出を分けるしきい値で、通常は3(標準偏差)が使われます。
(実際には、効率と系統誤差(統計的性質以外の要因による誤差)がわからないと正確な計算はできませんが、)この式よりBGの放射線量bが小さく、また検体の放射線量aが大きいほど測定時間tが小さくなる関係にあることがわかるでしょう。

『分析スタッフ』 | 21:52:33 | コメント(0)
YCRMS測定所内勉強会
12月7日(金)に測定所内勉強会がありました。

今回は、測定スタッフ主にママさん測定員が、スペクトルを見てセシウムがある。とか、ない。
とか、判断することに向けての勉強会でした。

セシウム値が低いと、、、有るか、無いかを見分けるのは、なかなか困難な場合があります。
横浜市民測定所では、分析班の3名の方がAT1320Aの出す判定結果のみではなく、
atsファイルから独自にスペクトルの解析をしています。

AT1320Aで出力されたスペクトルを分析し、セシウム等放射性核種のピークを同定する
プログラムを作っちゃった方がいます。
YCRMS内で「オレサマピークサーチ」と呼ばれているそのプログラムは、
数値計算言語「Matlab」で作り、フリーのクローン言語「Scilab」に移植したものだそうです。

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【MATLABって?】MATLAB(マットラブあるいはマトラボ、マトラブなど)は、
アメリカ合衆国のMathWorks社が開発している数値解析ソフトウェアで、
アルゴリズム開発、データの可視化、数値計算を行うための高レベルなテクニカルコン
ピューティング言語と対話型環境です。
MATLABを利用することにより、C、C++、Fortran といった伝統的なプログラミング言語
よりも短時間で科学技術計算の問題を解決することが可能です。
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なにやら、凄い事は解りますが、私の理解の範疇を大きく超えてしまっていて説明が
上手く出来ない事をご了承ください。

これがどう凄いかというと…
例をあげてみます。

こちらの画像を見てください。スペクトルが出ています。
これは、AT1320Aでジャムを19800秒(5時間30分)セシウム合計で2.4Bq/Kgの測定結果を
「オレサマピークサーチ」で分析したスペクトル図になります。
Cs-137とCs-134の特徴的な波形[三つの山、三姉妹のバランス]もそれほど悪くありません。
(Cs-134のほうが山が高くなっている原因はおそらくBi-214の混入でしょう。この影響を除くと真にバランスが良くなりますね。)
ATの検出限界付近の微量ですけど、確実にセシウムが入っています。

5.5時間

下の画像は、上のAT1320A純正のスペクトル図になります。判定でも検出になっています。
ただ、スペクトルは非常に見ずらい状態です。

19800s.jpg

そして、
下の画像スペクトル図を見てください。
これは、先ほどの同じジャムを1800秒(30分)測定した結果をオレサマサーチで分析したスペクトル図になります。

30分

「たった1800秒(30分)で5時間半の十分の一以下の時間でも、ピークはもう見え始めているんですね。僕ならこの時点でも、量はわからなくてもCsが検出された、と判断するでしょう。」
↑このプログラムを作った山下さんの言葉です。

下の画像は、上のAT1320A純正のスペクトル図になります。判定は不検出で、スペクトルは5時間半よりももっと見ずらい状態です。
1800秒測定で
CS-137は、NDで検出下限値2.91Bq/kg、Cs-134は、2.73Bq/kg統計誤差は66.0%
この状態で、セシウムの存在が解るのです。

1800s.jpg

また、このピークサーチはAT1320Aには無い、K-40(カリウム40)を使って、検体とOperational Backgroundのスペクトルシフトも計算しCs(セシウム)I(ヨウ素)のピークサーチを行います。
温湿度変化、気象条件変化等によるシフトズレを修正してくれます。

下の画像は、I-131とPb-214のピークサーチ結果になります。
I-131のスペクトルでは無い事がわかります。
そしてPb-214は26.8分で壊変してBi-214となりますので、Cs-134のほうが山が高くなっている原因の、Bi-214の混入が疑われ、Cs-134は過大評価の可能性が高くなるかと思います。
そう考えると、AT1320Aの出したCs-137、Cs-134の比率が悪いのも頷けます。

ヨウ素

このシステムを使えば、測定中に延長をかけた方が良い検体と測定を終わらせる検体とを容易に区別する事が出来ます。
また、測定依頼の測定時間(1時間測定、2~3時間測定)の選択参考になればと思います。

今回は、測定所内勉強会の内容、取り組みを紹介させて頂きました。
これからどんどん微妙な検体が増えていく中で、このプログラムは横浜市民測定所の強みになると思います。


測定に興味のある方は見学に、検体持ち込みに、お気軽に来て下さい。
牛乳の濃縮無料測定や、固化や灰化検体も募集していま~す。




『分析スタッフ』 | 10:40:42 | コメント(3)

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